大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和36年(う)376号 判決

被告人 渡辺淳こと真矢弘

主文

原判決を破棄する。

本件を松山地方裁判所大洲支部に差し戻す。

理由

ところで先ず本件記録を精査するのに、被告人は昭和二三年九月一一日原判示(一)、(二)の詐欺、公務執行妨害、傷害被告事件について松山地方裁判所大洲支部に公訴を提起せられ、更に同二五年五月六日原判示(三)の暴行被告事件について広島地方裁判所尾道支部に公訴を提起せられたものであるが、同三六年九月二七日広島地方裁判所尾道支部において、刑訴八条一項により後者を前者に併合する旨の決定があり、又松山地方裁判所大洲支部において、同年一〇月二日旧刑訴七条により前者に後者を併合する旨の決定があり、これに基づいて同大洲支部において両者につき併合審理の末、原審判決がなされたことが明らかであるが、刑訴施行法四条によれば新刑訴施行の際未だ公訴が提起されていない事件については新刑訴を適用すべきものであり、同施行法二条によれば新刑訴施行前に公訴の提起のあつた事件については新刑訴施行後もなお旧刑訴及び応急措置法によるべきものであつて、新刑訴と旧刑訴とは第一審手続のみでなく上訴審の手続を全く異にするものであるから、第一審において本件新法事件と旧法事件とを併合審判すべきものではない。(最高裁判所昭和二五年三月二三日判決・昭和二四年新(れ)第四〇五号参照)従つて前記詐欺等被告事件に前記暴行被告事件を併合審判した原審の訴訟手続には法令の違反があつて、その違反が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとゆうべく、原判決は破棄を免れない。

よつて弁護人等の論旨に対する判断を省略し、刑訴三九七条一項、三七九条により原判決を破棄し、同四〇〇条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤謙二 小川豪 雑賀飛竜)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例